SOURCING / BREAD
パンの包装を変える前に、何を保存試験で比べるか
今の袋では、店頭に並んでいる間にパンが硬くなる。そこで、水蒸気を通しにくいフィルムを提案してもらいました。数値はよさそうですが、包材の数値は候補選びの手掛かりです。期限を見直すには、パンを包装した状態での品質と安全性を確かめます。
架空のスライスパンの包装変更を例に考えます。保存可能な日数やガスの配合、食品の安全基準を提案するものではありません。
硬さの問題を、袋の数値だけで解こうとしない
フィルムの水蒸気透過度は、決められた条件でどれくらい水蒸気を通すかを表す値です。パンをそのフィルムで包んだときの、硬さや香り、結露、カビの発生時期を直接示す数値ではありません。パンの配合、焼成、包装時の状態、保管環境も結果に関わります。
硬くなる理由も、外へ水分が逃げることだけではありません。パン内部の水分移動や、でんぷんの構造が再び変わる老化も関わります。[1] 水分を逃がしにくい袋だけで硬化を防げるとは考えず、食感を完成品で比べます。
今回の目的が「販売期間の後半でも食感を保つ」ことなら、まず現行包装で、どの時点に何が不満になるのかを見ます。硬さ、ぱさつき、香り、見た目を同じ「劣化」にまとめると、変更後に何が改善したか分からなくなります。
図では、フィルムを通る経路と、シール部分の不具合による経路を分けています。フィルム自体の値がよくても、完成した袋の状態は別に評価が要ります。さらに、パン内部の変化まで、包装の透過度だけで説明できるわけではありません。
- 01 · 水蒸気・気体の通過
- フィルム
- 02 · シール部の経路の例
図は説明用の模式図です。製品図面・測定結果ではありません。
比較の出発点は、今つくっているパンと包装
試験では、現行包装を比較対象として残します。現行品と候補品でパンの配合や冷却条件まで変えてしまうと、結果の差が包装によるものか切り分けにくくなります。まず包装以外の条件をそろえ、変えた条件を記録します。
包装時のパンの状態、製造ロット、袋の構成と厚さ、シール条件、保管温湿度、採取日を試料IDにつなぎます。実際の配送や店頭の条件に幅があるなら、想定する販売経路に沿って試験条件を決めます。都合のよい一定温度の結果だけを、温度変動のある流通へ広げないためです。
透過度を比較するときは、試験温度・湿度、試験方法、単位、フィルムの構成を合わせて読みます。カタログにある二つの数字の大小だけでは、同じ条件で測ったものか分かりません。候補企業には、その数値がどの仕様のフィルムに対応するかまで尋ねます。
一つの保存試験に、全部の答えを背負わせない
Licciardelloらのデュラム小麦パンの研究では、包装条件による品質の違いを、食感や水分、香りなど複数の指標で追っています。[1] 一つの指標だけで品質全体を代表させない参考になります。ただし、その研究は別のパンの期限や微生物学的な安全性を保証するものではありません。
今回の食感評価でも、測定方法と官能評価の見方を先に決めます。「初日より硬くなったか」と「商品として受け入れられるか」は同じ問いではありません。どの程度まで許容するかを、結果を見てから都合よく動かさないことが大切です。
安全性に関わる評価は、食感や香りとは別に食品の品質保証担当と試験機関が設計します。見た目にカビがないことや、袋から漏れが見つからないことだけで、安全性が証明されたとは扱えません。試験対象の選定、判定基準、必要な反復数、期限表示への反映を含めて判断します。
品質の評価
食感・水分・香りなど
安全性の評価
対象・方法・基準を専門担当と決める
同じ商品・包材・保管条件に結び付ける
図は説明用の模式図です。製品図面・測定結果ではありません。
候補フィルムがよく見えたとき、次に確かめること
保存試験で食感が改善しても、包みやすさやシールの安定性が現行と同じとは限りません。実ラインでの搬送、しわ、かみ込み、印字、包装後の取扱いまで試し、保存試験に使った包材と量産候補が同じ仕様であることを結び付けます。
食品との接触に使えるかも、販売先と用途に沿って確かめます。例えば米国FDAの資料は、食品の種類と使用条件を区別しています。[2] これは米国向けの参照資料であり、世界共通の承認ではありません。候補包材の構成と実際の用途に対応する資料を、仕向地に応じて確認します。
候補を一つに絞れない場合でも、「食感は改善したが、香りは判定待ち」「保存中の品質はよいが、ラインでしわが出た」と残せば、次の試験が具体的になります。総合点だけで順位を付けるより、採用を止めている項目が分かる方が、改善の相談ができます。
期限を決めるのは、完成した商品での結果
この例では、低い水蒸気透過度は候補を探す手掛かりです。採用の理由になるのは、想定する販売条件で、パンと包装を組み合わせたときの結果です。フィルムの変更、ラインでの成立、保存中の品質、安全性の評価がつながって初めて、表示や販売条件を見直す材料がそろいます。
まずは現行包装と候補を同じ計画で比べ、どの項目が採用条件を満たし、どこが未評価かを残します。必要な証拠がそろう前に「包装を変えたので日持ちが延びた」と結論付けないことが、やり直しを減らします。
実務に使う質問例
質問例を開く
1. 現在の困りごと 現行包装、パンの配合・包装時の状態、流通条件と、硬さ・香りなど問題になる項目を共有します。 2. 包材の比較条件 候補の構成・厚さ、透過度の試験方法・温湿度・単位、食品接触用途に対応する資料を提示してください。 3. 試験と採用 現行包装を対照にした保存試験、実ラインでの確認、品質・安全性の評価範囲と未評価事項を分けて相談したいです。