ALUMINIUM PARTS / QUOTATION

アルミ部品の見積を、単価だけで比べる前に

同じ取付プレートについて、二つの見積が届いたとします。図面も数量も同じですが、加工内容の欄には違いがあります。

以下は、図面AP-01 Rev D、指定材6061-T6、100個の取付プレートを想定した架空の見積例です。

図1|A社は3つを含む。B社は切削加工だけ

A社

見積に含む

切削加工

材料を削って形にする

黒アルマイト

黒い表面に仕上げる

寸法成績書

測った寸法を記録する

B社

見積に含む
見積に含まれない

切削加工

材料を削って形にする

黒アルマイト

黒い表面に仕上げる

寸法成績書

測った寸法を記録する

B社では、表面処理と成績書を別に手配するか、見積へ追加してもらう必要があります。A社の成績書がいつの寸法を記録するかは、この記載だけでは分かりません。

単価を比べる前に、B社には表面処理と検査を含めた価格を聞きたくなります。では、それらを含むA社は、そのまま発注できるでしょうか。「寸法成績書込み」という一行にも、まだ読み取れないことがあります。

B社の見積に入っていない仕事は、誰が引き受けるのか

黒アルマイトを施した完成品が必要なら、B社の見積では切削加工の後に仕事が残ります。別の会社へ表面処理を頼むのか、B社にまとめて依頼するのか。前者なら、処理業者への手配や部品の移送、仕上がった部品の受け取りも調達側の検討事項になります。

B社の単価に表面処理代だけを足せば比較できる、とも限りません。処理後の検査や梱包まで含め、どこからどこまでを誰が担うかで、買う側に残る仕事が変わるためです。完成品を受け取るところまでを見積もってもらうと、A社との価格差を読みやすくなります。

加工のみの提案が悪いわけではありません。自社で処理を手配する体制があれば、分けて発注する選択もあります。その場合は、メーカーへ支払う金額と、自社が引き受ける手配・確認の仕事を合わせて判断することになります。

A社の成績書は、いつ測った寸法を記録するのか

一方、A社は処理も成績書も含んでいます。それでも、見積の一行だけでは分からないのが、測定のタイミングです。切削した直後の寸法なのか、アルマイト処理を終えた完成品の寸法なのか。同じ「寸法成績書」でも、確かめられることが違います。

ここで気になるのが、プレートを相手部品へ取り付ける穴や面です。ProtolabsのCNCガイドは、硬質アルマイトが厳しいはめ合いに影響し得ると説明しています[1]。この例の「黒アルマイト」も、色の指定だけでは処理の種類や寸法への影響が分かりません。必要な処理仕様と、穴や取付面をどう仕上げるかが、完成品の検査を考える前提になります。

この例でA社に聞きたいのは、「成績書は付きますか」から一歩進んだ質問です。どの箇所を、どの工程の後に測るのか。図面で求める完成状態と成績書の対象が一致していれば、受け入れ時にも同じ条件で照合できます。

図2|取付部に合う寸法を、いつ確かめるか
部品と取付部の模式図 部品 取付部
01加工時点の測定
切削した部品が、その段階の寸法条件を満たすか。
02完成品の測定
指定の表面処理を経た部品が、必要な寸法条件を満たすか。
03成績書との対応
どの箇所の、どの段階の測定値が記録されるか。

部品と取付部の関係を示す模式図。寸法・皮膜厚さを示す製造図面ではありません。

精度をそろえると、価格差の意味も変わる

成績書を発行する段階が同じでも、満たすべき寸法条件に差があれば、価格の前提は変わります。同じCADを送っていても、見積がどの図面・仕様の版に基づくか、公差への例外が付いていないかまでは、回答を見ないと分かりません。

Protolabsの公差ガイドでは、厳しい公差が加工・測定・品質確認の負担を増やすことが説明されています[2]。必要な機能寸法まで対応する見積と、一部を標準公差として回答した見積では、価格の前提が変わります。外形の一部と、組付けを左右する穴を一括して「高精度」と呼ぶだけでは、この違いが隠れてしまいます。

価格差をきっかけに要求を見直す余地はあります。ただ、安い見積に合わせて購買担当者だけで公差を緩めると、必要な部品を買えているかが曖昧になります。設計担当者が変更を認めたなら、その図面で両社に改めて見積もってもらう。比較の土台を変えたときは、価格も同じ土台へ戻す必要があります。

材料の変更案も同様です。指定材での見積と、別の合金・質別を提案する見積は、承認前に同じ条件として並べられません。材料や製法の変更を検討するなら、表面処理を含む要求への適合も、設計・品質担当者と見直すことになります。

二つの見積を、同じ比較表へ戻す

「全部込みですか」という聞き方では、何をもって「全部」とするかを相手に委ねてしまいます。必要な完成品の状態と照らし合わせると、各社へ返す質問を絞れます。

図3|この見積例で、各社へ返す質問
確認先見積のどこを見るか返す質問
A社寸法成績書図面のどの箇所を、表面処理の前後どちらで測りますか。測定方法と記載項目も教えてください。
B社加工後の作業指定の表面処理、処理後の検査、成績書まで含めた見積をお願いします。別途となる作業は分けて記載してください。
両社図面・材料の前提図面AP-01 Rev D・指定材6061-T6への例外や、代替提案はありますか。
両社費用と納期の範囲初回費用・梱包・輸送の含む/別途と、納期を数える起点・引渡し地点を教えてください。

費用や納期の前提は、両社にそろえて聞く項目です。初回だけ必要な段取り・治具代と、注文ごとにかかる費用が分かれていれば、今回の発注と再注文を別々に検討できます。納期も、図面承認から数えるのか、材料がそろってからなのかで、同じ日数の意味が変わります。

安い理由を説明できる状態で、価格を比べる

B社から必要な作業を含む再見積が届き、A社から処理後の検査内容が返ってきたところで、ようやく完成品の費用を比較できます。単価に含まれる作業を確認したうえで、別途の初回費用や、同じ引渡し地点までに必要な費用を加えます。まだ回答のない費用は、比較表でも未回答のまま残ります。

その結果、B社のほうが安くなるかもしれませんし、追加作業を含めると差が縮まるかもしれません。A社にまとめて頼むことで、自社の手配が少なくなる場合もあります。大切なのは、どちらかが安いと決める前に、その価格で何を受け取れるのかを説明できることです。

アルミ部品の相見積は、金額の差を見つけるだけでは終わりません。必要な部品が完成するまでの仕事を見比べると、価格差の中身と、発注前に残っている判断が見えてきます。

手元の見積で使う

メーカーへの確認文面を開く

例の図面番号・数量を置き換え、送付先に必要な質問だけを残してお使いください。

件名:AP-01 Rev D・100個の見積条件について

お見積りありがとうございます。発注条件を検討するにあたり、以下を確認させてください。

1. 寸法成績書
図面のどの箇所を、表面処理の前後どちらで測りますか。測定方法と記載項目も教えてください。

2. 加工後の作業
指定の表面処理、処理後の検査、成績書まで含めた見積をお願いします。別途となる作業は分けて記載してください。

3. 図面・材料の前提
図面AP-01 Rev D・指定材6061-T6への例外や、代替提案はありますか。

4. 費用と納期の範囲
初回費用・梱包・輸送の含む/別途と、納期を数える起点・引渡し地点を教えてください。

図面要求と異なる条件や、価格に含まれない作業がありましたら、あわせてお知らせください。
どうぞよろしくお願いいたします。

出典

  1. Protolabs — Definitive Guide to CNC Machining

    硬質アルマイトとはめ合いへの影響。Anodizing Looks Great、印刷ページ27。特定の処理条件に関する説明であり、例の部品に生じる寸法変化を算定したものではありません。

  2. Protolabs — Fine-Tuning Tolerances for CNC Machined Parts

    厳しい公差と加工・測定・品質確認の負担。Key Points / Perfection Can Hinder Progress。掲載された能力値は、各メーカー共通の公差として採用していません。