SOURCING / PROCESS
試作できたアルミ部品を、量産でも切削でつくる?
削り出しの試作品が組み上がり、次の見積には鋳造用の金型費が載ってきた。数量が増えるなら製法を変えた方がよさそうですが、まだ設計変更もありそうです。まずは、図面を満たす完成品までの工程と、確定している発注数量をそろえて比べます。
これは架空の装置用ブラケットを使った検討例です。価格や生産数による切替基準を示すものではありません。
同じブラケットでも、形のつくり方が違う
今回のブラケットには、取付穴と、その周囲の位置決め面があります。試作は板材から削り出しました。組付けはできましたが、それだけでは鋳造や押出でも同じ仕様を満たせるとは判断できません。
切削は材料を取り除いて形にします。鋳造は溶融金属を型へ入れて形にし、押出は金型の開口を通して長さ方向に同じ断面をつくります。ここでいう鋳造は、まずダイカストを候補にした場合を考えます。鋳造にはほかの方法もあり、ひとまとめの単価では比較できません。
図のように、押出で得られるのは長さ方向に続く断面です。横向きの穴まで同時にできるわけではありません。Hydroの金型解説でも、押出の断面に合わせた金型設計を扱っています。[1] ブラケットの断面をそろえられるなら、押出材を切断し、必要な穴や面だけを加工する案が候補になります。
切削
材料を削る
鋳造・ダイカスト
圧力で型へ入れる
押出
同じ断面を長くつくる
穴・基準面などの追加加工
図は説明用の模式図です。製品図面・測定結果ではありません。
製法を変えても、残る加工がある
鋳造案で外形を型からつくれても、取付穴や位置決め面をどこまで型で仕上げるかは別の話です。追加切削、ばり取り、表面処理、検査まで含めて初めて、図面を満たす部品の見積になります。
例えば、外形は多少変えてよくても、相手部品と接する面と穴位置は変えられないとします。この区別を図面に入れると、候補企業は外形の変更案を出しやすくなります。反対に、全面を試作品と同じ形・同じ精度に固定すると、別製法の利点が出にくい場合があります。
材料も同じ名称のまま置き換えられるとは限りません。切削試作の合金・調質と、鋳造や押出で提案される材料が違えば、強度、耐食性、表面処理の見え方を設計側で見直す必要があります。寸法が同じでも、同じ部品として扱えるかは用途によって変わります。
金型費を割る数量は、販売予測とは分ける
比較表には、初回に必要な費用と、発注のたびにかかる費用を分けて置きます。金型や治具、初期試作、承認までの評価費は初回側へ。材料、成形や加工、仕上げ、検査、梱包などは、見積での課金方法に合わせて振り分けます。単価に含まれた項目を二重に足さないことも大切です。
そのうえで、確定している発注分、追加発注がある場合、設計が変わる場合を別々に比べます。販売予測の全量で金型費を割ると、実際には発注しなかった分まで使って単価を安く見せてしまいます。数量が変わるとロット条件や在庫負担も変わるので、同じ単価をそのまま掛け続けるとは限りません。
切削時間の推定研究でも、形状の複雑さだけでなく、大きさや材料など複数の条件を扱っています。[2] この研究から「何個以上なら鋳造」という境界は出せません。今回必要なのは、自社の数量シナリオと図面に対する候補企業の見積です。
確定した発注
初期費用+完成品までの費用
追加発注の場合
再利用できる型・治具と、繰返し費用
設計が変わる場合
改修・再試作・再評価の費用
図は説明用の模式図です。製品図面・測定結果ではありません。
設計が動く間に、決めておけること
ブラケットの取付位置がまだ変わりそうなら、今すぐ量産金型を発注する以外にも進め方があります。当面の必要数は切削で確保し、その間に鋳造向けの形状案と押出断面案を検討してもらう方法です。設計の成熟度と調達の準備を、同じ日程に押し込む必要はありません。
ただし、切削試作品の組付け確認を、別製法の量産承認へ引き継ぐことはできません。材料、肉厚、抜き方向、加工基準などが変わる案なら、その変更が効く機能を改めて試す計画が要ります。どこまで評価をやり直すかを先に決めると、初期費用の比較にも漏れが出にくくなります。
見積依頼には「変更不可の機能」と「提案を受けられる形状」を分けた図面を添えると話が進みます。数量は確定分と予測分を分け、必要納期、仕上げ、検査まで渡します。回答には、未確定の前提と追加評価が必要な箇所を残してもらいます。
今回の決め手は、安い製法の名前ではない
この例で最初に決めるのは、金型費を払うかどうかより、どの仕様をいつ固定できるかです。断面を共通化できるなら押出案を、外形変更を受けられるなら鋳造案を具体化し、切削継続案と同じ完成品条件で比較します。
切削を続ける結論でも、検討が無駄になるわけではありません。次の設計改版や需要増加時に見直す条件が分かれば、製法変更を急がずに済みます。逆に、型を使う案が有利なら、初期費用だけでなく、評価と変更対応まで含めて選ぶ理由を説明できます。
実務に使う質問例
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1. 機能と変更余地 取付穴・接触面など変更できない箇所と、形状提案を受けられる箇所を分けた案をお願いします。 2. 完成品までの範囲 材料、二次加工、仕上げ、検査を含む案と、除外される工程・費用を教えてください。 3. 数量と改版 確定分・追加発注・設計変更の各場合について、初期費用、ロット条件、変更費用、承認までの日程を分けて回答してください。