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「Ra 1.6」だけで、加工面の合否はそろうか

測った面・方向・評価条件をそろえると、粗さ成績書の食い違いを切り分けやすくなります。

加工したカバーのシール面に「Ra 1.6」と指示した仮例を考えます。加工先の成績書は合格なのに、受入検査では違う値が出ました。加工先は端に近い場所で加工目に沿って測り、受入側は中央寄りで加工目を横切って測定。フィルタの設定も違っていました。まず必要なのは、さらに滑らかに仕上げる依頼ではなく、図面改訂、測定位置、方向、測定条件の照合です。同じ対象を同じ意味で測れて初めて、数値を合否の根拠にできます。

目次

  1. 数値の前に、どの面の何を求めたか
  2. RaとRzでは、輪郭の捉え方が違う
  3. 一本の測定線は、面の一部を見ている
  4. 値を比べる前に、条件を並べる
  5. 古い図面は、参照した規格の版から読む
  6. 再仕上げの前に、食い違いの根拠を残す

数値の前に、どの面の何を求めたか

図面上で、対象となるシール面や相手部品との合わせ面を指し示します。面全体のどこまでが粗さ指示の対象か、仕上げや表面処理の前後どちらで満たす要求かを明らかにしてください。図面の一般注記、局部の記号、加工先の工程上の解釈が、別々の面や状態を想定していることがあります。単位と、適用する図面表記のもとで限界値が何を意味するかも残します。メールにある「1.6」だけから合否判定の全条件を補うことはできません。

その面が組付け後に果たす役割も確かめます。このカバーでは、粗さへの適合と、液漏れを防ぐ機能は別の評価です。相手面、シール部材、平面度、傷、組付け条件なども検討対象になり得ます。漏れ試験が必要なら、設計責任者と別途その条件を定めます。原因が分からないままRaの限界値だけを厳しくすると、仕上げの手間が増えても漏れの原因が残るかもしれません。

RaとRzでは、輪郭の捉え方が違う

Raは輪郭の偏差の大きさを平均として表すため、測定した線の形をすべて残す指標ではありません。全体に細かな凹凸がある面と、局部に溝がある面では、Raが近くても調べるべきことが違います。Rzは山谷の高さに関わる指標ですが、正確な定義と評価方法は適用規格と組で読む必要があります。ミツトヨの解説も、古い規格のRzが別の指標を指す場合に注意を促しています。[1]

Raに一定の倍率を掛けて、どの面にも通用するRzの合格値を作らないでください。Ra指示の図面に対してRzしか出せない場合は、合意した方法でRaを測定できるかを加工先へ尋ねます。機能のために別のパラメータや傷の基準が必要なら、設計側で定義・承認する項目です。納入後にRzを追加して不合格にすることは、元のRaの解釈を明確にする作業とは異なり、受入条件の変更になります。

一本の測定線は、面の一部を見ている

図面や写真に測定線を記入し、加工目に対してどちらへ走査したかを示します。溝に沿う線と、溝を横切る線では、同じ凹凸を捉えるとは限りません。適用する仕様と、機能上気にしている箇所に沿って位置・方向を選び、記録します。検査する人が、その場で測りやすく、良い値の出る線を選ぶ運用にはしないことが大切です。

仮例のカバーでも、端部や穴、幅の狭いシール面が、想定した走査を妨げることがあります。量産の受入前に、実際に通せる測定線と制約を加工先に示してもらいます。近くの測りやすい面を測れば代用できるとは限りません。指定どおりに測れないなら、技術責任者と代替方法およびその限界を合意し、測定場所だけを黙って移さないようにします。

対象面から測定線、測定記録までを結ぶ
対象面から測定線、測定記録までを結ぶ123
  1. 1機能を担うシール面・合わせ面
  2. 2測定線と走査方向
  3. 3輪郭と評価条件の記録

説明用の模式図です。矢印は測定方向の表示であり、全ての面に共通する指定方向ではありません。輪郭は例示で、粗さの数値や合格条件を示していません。

値を比べる前に、条件を並べる

食い違いのある成績書では、パラメータと単位、適用規格と版、フィルタ、関係する長さの設定、触針やセンサ、測定位置・方向、測定した工程段階を確認します。残っていれば個々の測定値や輪郭記録も受け取ります。装置やソフトウェアの規格設定が違うときに、「工場の標準設定です」だけでは比較条件が分かりません。

これは比較を再現できるようにするための実務上の確認項目であり、本記事から設定値を一律に指定するものではありません。適切な選択と既定値は、適用仕様や方法によって変わります。触針が届くか、面が清浄か、測定機の状態を確認しているかも調査対象です。接触式と光学式を比較するなら、その面と要求に両方の方法が適しているかを先に確かめ、数値だけを置き換えないようにします。

成績書の食い違いから、次に求める資料を選ぶ
分かったことまだ分からないこと次に求める根拠
「Ra合格」とだけ記載まだ分からないこと測定線と評価条件が不明。次に求める根拠位置・方向を記入した図と、パラメータ・単位・条件のある記録。
同じ面を違う方向で測定まだ分からないこと異なる断面の凹凸を見ている可能性。次に求める根拠位置・方向を合意して測った比較記録。
Ra指示にRzの記録を提出まだ分からないこと指定パラメータへの適合は未確認。次に求める根拠合意した方法のRa測定値、又は承認済みの仕様変更。
Raは適合しても漏れるまだ分からないこと粗さへの適合だけではシール機能を判断できない。次に求める根拠粗さ記録に加え、別途合意した機能・幾何形状の評価。

古い図面は、参照した規格の版から読む

ISOの公開目録では、ISO 21920-2:2021は輪郭曲線方式の用語・パラメータ、ISO 21920-3:2021は仕様オペレータを扱います。それぞれの履歴には従前のISO 4287、ISO 4288が示されています。[2] [3] ここで確認できるのは文書の範囲と関係であり、図面の解釈に必要な細則の全てではありません。

既存の契約や図面が、旧版のISOやJISを明示している場合があります。測定機のメニューに新しい規格があるからといって、その参照を置き換えないでください。一般注記、参照仕様、合意済みの改訂を確認します。ISO 21920へ移行するなら、影響する指示と評価条件、結果への影響を整理し、承認された改訂を残してから受入へ適用します。メニューの切替だけでは、新旧の結果が同等である証拠にはなりません。

再仕上げの前に、食い違いの根拠を残す

問題になった現物と識別番号、図面改訂、元の成績書を保管します。面を再加工する前に、位置を特定した測定線で双方の方法を比較し、比較する条件を固定します。何の差を調べているかも記録してください。限界値付近でなお判定が分かれるなら、測定不確かさと合意した適合判定ルールを品質・技術担当と確認します。表示値が小さい方が自動的に正解になるわけではありません。

原因が分かったら、対象面と位置、パラメータと限界値、規格、方法と設定、現物の状態、報告内容、例外時の扱いを検査指示へまとめます。合意した抜取方法や機能試験は別に明示します。手直しを行うなら、寸法と機能への影響を評価して承認し、手直し後の状態を検査します。目指すのは、その場で良い値を出すことではなく、次のロットでも使える共通の受入条件です。

次に製作者と話すために

図面の粗さ指示と成績書がかみ合わないときは、対象箇所の図面と測定条件を添えて、加工先へ何を確かめるかHAMへご相談ください。

加工先への確認文面

質問例を開く
[品番/図面改訂]の、図示した[シール面・合わせ面]の粗さについてご相談です。図面の指示は[パラメータ・数値・単位]、受入で確認したい状態は[工程段階]です。適用した規格と版、限界値の解釈、測定位置と走査方向、フィルタと長さの設定、触針・センサと測定機、測定時の現物の状態をご教示ください。測定線を記入した図と、可能であれば個々の測定値又は輪郭記録もお願いします。懸念は[成績書の食い違い/溝/機能上の不具合]です。測定のアクセスや指定方法に制約がある場合は、方法変更や手直しの前に、制約と代替案をご提示いただき、承認を得てから進めてください。図面変更の提案や機能試験は、現行の粗さ指示への適合結果と分けてご回答いただけますと幸いです。
質問例を保存 ↓

出典と確認範囲

  1. Mitutoyo — 表面粗さの基礎知識

    ミツトヨ公式の基礎解説。パラメータと旧表記の説明はページに明示されたJIS/ISOの版に基づくものです。表の数値を仮例の共通設定にはしていません。

  2. ISO 21920-2:2021 — official public catalog

    ISO 21920-2:2021の公式公開目録。対象範囲と文書履歴を確認し、規格全文は未読です。

  3. ISO 21920-3:2021 — official public catalog

    ISO 21920-3:2021の公式公開目録。対象範囲と文書履歴の確認に限り、詳細な既定値・合否判定規則を転載又は検証したものではありません。

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