「穴径20 mm」で発注して、軸は入る?
穴と軸の許容差、仕上がりの状態、使い方をそろえて、加工品の見積を比べます。
保全時に抜き差しする位置決めピンと、その相手穴を発注するとします。見積にはどちらも「径20 mm」。ところが、穴の図面には公差があり、ピン側は呼び寸法だけです。届いたものが一度入ったとしても、次のロットでも同じように組めるかは分かりません。これは仮の調達例です。見積でそろえたいのは、20という数字に加えて、穴と軸それぞれの許容範囲と、組み合わせたときに必要な動きです。
穴の指定だけでは、組合せが決まらない
「20 mm」は寸法の基準になる呼び寸法です。穴が許される最小・最大の寸法と、軸が許される最小・最大の寸法が分かると、組合せでどれだけすきまやしめしろが生じ得るかを考えられます。穴の加工精度だけを上げても、相手の軸の範囲が曖昧なら、欲しい組付け状態を指定したことにはなりません。
H7やg6などの記号を使う場合も、穴と軸の両方、呼び寸法、適用する規格をセットで読みます。メーカーの技術表にも寸法区分に関する注記があります。[1] 以前の図面で使った組合せを、そのまま別の径や用途へ移す前に、今回どの範囲を指定しているかを確かめたいところです。
最小と最大を、組み合わせてみる
ここでは計算を説明するため、穴を20.000〜20.020 mm、軸を19.990〜20.010 mmと仮定します。規格の公差記号に対応させた数値ではありません。最もきつい組合せは、最小の穴20.000から最大の軸20.010を引いた−0.010 mm。逆に、最大の穴20.020と最小の軸19.990なら、すきまは0.030 mmになります。
つまり、この仮の指定では、しめしろが生じる組合せも、すきまが生じる組合せも含まれます。試作品の一組が手で入ったという結果だけでは、許容範囲の端にある組合せまで同じとは言えません。保全で外したいピンなら、どの程度の着脱性が必要かを設計担当者へ戻し、その目的に合う両部品の指定を決める流れになります。
- 1穴を持つ部品と、その寸法範囲
- 2相手のピンと、その寸法範囲
- 3呼び寸法からのずれを比べる
ピンと穴の模式図と、仮の公差域です。右の数値は呼び寸法20 mmからの差をμmで示します。形状や隙間は強調しており、推奨公差や実物の縮尺ではありません。
寸法の範囲と、実際の使いやすさ
径の範囲がそろっても、長い穴の傾き、軸の曲がり、入口のばり、表面の状態などが組付けに影響する場合があります。位置決めに使うなら、相手穴の位置や基準面との関係も別の論点です。MISUMIの位置決めピンの事例も、径の組合せとねじによる固定、形状の関係を分けて扱っています。[2]
この例では、保全時に抜き差しする部分と、ベース側へ固定する部分を図面上で区別すると、仕入先にも目的が伝わります。処理前の値か、めっきなどを含む仕上がり後の値かもそろえます。使用時の温度、異なる材質の組合せ、潤滑や汚れの条件が効く用途なら、その条件を含めて設計側で評価します。公差記号一つで、これら全部が決まるわけではありません。
見積は、回答の範囲を比べる
見積に「精密加工」とあっても、何をどの状態で検査するかが書かれていなければ、今回のピンと穴の合否は読み取れません。まず同じ図面の版に対して、両部品の限界寸法、仕上がり段階、検査の範囲が回答されているかを比べます。表は、この仮例で返ってきそうな回答と、発注前に残る問いです。
一組を合わせて納める場合と、将来の交換品も任意に組み合わせる場合では、受入れで確かめたいことも変わります。組合せ検査をするなら、どの個体・ロットを対象に、何をもって合格とするかを取り決めます。「合わせて入りました」という回答を、量産品すべての互換性へ広げないことが大切です。
| 回答項目 | 返ってきた内容 | 発注前に残る問い |
|---|---|---|
| 径の指定 | 返ってきた内容穴20 mm、ピン20 mm | 発注前に残る問い両部品それぞれの上下限は? |
| 検査の段階 | 返ってきた内容加工後に寸法検査 | 発注前に残る問い表面処理を含む最終状態か? |
| 組付け | 返ってきた内容サンプル一組は挿入できた | 発注前に残る問い別個体・次ロットの受入条件は? |
| 検査の範囲 | 返ってきた内容成績書を添付 | 発注前に残る問い対象寸法、方法、個体・ロットの範囲は? |
相手部品の情報を添えて、見積を頼む
問い合わせには、ピンと穴を持つ部品の図面番号・版、使用する箇所、抜き差ししたい理由、数量を添えます。相手部品を交換できない場合は、元の図面と、現在の実測値や摩耗の状態を分けて伝えます。摩耗した現物の径を、そのまま新しい呼び寸法にしてしまうと、元の設計意図を見失うためです。
設計側で決めた寸法と受入条件に対し、仕入先から加工・検査できる範囲と残る差を返してもらいます。試作の組付け結果が必要なら、量産の前に確認する項目と変更の承認者も決めておくと、見積の次へ進めます。日本企業への照会では、部品単体の図面に加え、相手との関係が分かる情報が役立ちます。
見積依頼に添える質問例
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[部品名]のピンと相手部品を検討しています。図面は[番号・版]、数量は[数量]、用途は[位置決め/着脱など]です。抜き差ししたい部分と固定する部分を添付図に示しました。穴・軸それぞれについて、指定した最小/最大寸法への加工可否、仕上がり段階、表面状態、必要な検査と成績書の範囲をご回答ください。相手が既設部品の場合は、元図面と現状測定を別に添付します。対応できない指定や未確認事項を分けて示し、試作と量産の範囲、納期の前提を含めて見積をお願いします。変更案は設計側の確認後に確定します。
出典と、この例での使い方
- MISUMI — Dimensional tolerances and fits (technical data)
メーカーの参考公差表。寸法区分と組合せの読み方を参照し、現行規格全文の確認とは分けています。
- MISUMI — Commonly used combinations of fits
位置決めピンの個別事例。固定方法と幾何学的な関係を分けて読むために参照しました。