交換ボールねじは、軸径とリードで選べる?
ねじ軸・ナット・軸端・支持軸受を一つの送り機構として捉え、交換品の見積条件をそろえます。
たとえば、加工機の送り軸を修理するため「軸径25 mm、リード5 mm」のボールねじを探しているとします。候補のカタログ寸法は合っていますが、届くのは軸端未加工品。既設品には軸受を受ける段とロックナット用ねじがあり、ナットの予圧も分かりません。これは仮の調達例です。発注の判断には、呼び寸法に加え、機械へ取り付く形状と、運転中に必要な性能を結び付ける必要があります。
「25×5」の先に、交換する範囲がある
軸径とリードは候補を探す入口です。リードはねじ軸1回転当たりの公称移動量で、隣り合う溝の間隔だけを見て決めるものではありません。ねじの方向、必要ストローク、有効ねじ長さ、全長も元の仕様と照合します。リードが変わると同じ回転数での送り速度や駆動条件が変わるため、制御側の数値変更だけで採用を決められません。
まず、交換範囲がナット単体、ねじ軸とナットの組合せ、支持軸受やカップリングを含む一式のどこまでかを見積依頼に示します。ボールねじは回転を送りへ変える部分です。テーブルを案内するリニアガイドのレール・ブロックとは役割が異なり、ガイド側の交換条件が分かっても、送り機構の適合は別に確かめる必要があります。
軸端の段とナットの取付面まで図面をつなぐ
THKには軸端の追加工を前提とした製品群があります。[1] そこで、候補が軸端未加工品か、指定図面どおりの完成品かを見積の段階で分けます。軸受取付径・肩の位置・締結用ねじ・カップリング取付部を、支持ユニットと相手部品の図面へ対応させると、追加工に何が必要かが見えてきます。公差は承認図面に定め、現物を一度測った値だけで決めません。
ナット側は外径だけでなく、フランジの穴配置、取付面の位置、軸中心の高さ、向き、潤滑口や循環部の干渉を見ます。元の型番が読めない場合は、取付状態の写真と測定箇所を残し、摩耗や損傷のある箇所を区別します。摩耗後の寸法は現状の証拠であり、元の呼び寸法やはめあいを直接示すものではありません。
- 1ねじ軸とリード
- 2ナットの組合せと予圧
- 3軸端と支持部の取合い
模式図です。番号はねじ部、ナット、加工された軸端・支持部に対応します。寸法比、予圧構造、支持方式や互換性を指定する図ではありません。
位置決め精度と反転時の遊びを分ける
THKの選定資料もリード精度と軸方向すきまを別に扱っています。[2] 精度等級の表示だけで、機械を反転させたときの失われる動きまで決まるわけではありません。送り距離に対する誤差と、反転時の挙動に何を求めるかを、それぞれ設備仕様から拾います。測定長さや評価方法の異なる「精度」の数値を並べても、同じ比較にはなりません。
反転時のずれは、ねじとナットだけでなく、支持軸受、締結、カップリングなども含めて切り分けます。ナットのすきまと軸全体の反転誤差を同じ値として注文しないことが大切です。現状測定は測定位置・荷重・温度・制御条件とともに残し、新品の単体検査と据付後の機械評価を別々に合意します。
予圧は、強くすればよいものではない
予圧の指定が不明なまま「遊びが少ないもの」を頼むと、元と違う回転トルクや運転状態を招くおそれがあります。THKは過大な予圧による発熱と寿命への影響を示しています。[2] 既設品の仕様を確認し、変更する場合は荷重、回転数、運転時間、必要剛性を設備メーカーまたは設計責任者へ渡して検討します。
同時に、支持方式と軸受の型式・組合せ・取付状態、潤滑方法、切粉や粉じんへの保護、周辺温度を伝えます。鉛直軸なら荷重保持やブレーキを含む機械側の安全条件も必要です。「以前と同じように使う」という説明より、ストローク、速度、加減速、荷重と運転頻度が分かる方が、供給者は変更の影響を検討しやすくなります。
見積の価格差を、供給範囲から読む
この仮例で、一方が軸端未加工のねじ軸・ナット、もう一方が軸端加工と検査記録まで含むなら、価格差には作業範囲の差が含まれます。軸受やロックナットの再使用可否、組付け、機械の芯出し、据付後試験は誰が行うかも分けておきます。表の候補は比較の考え方を示すもので、実在する見積や供給条件ではありません。
ナット単体の提案には、既設ねじ軸の識別と状態、組合せ可能性、組付け・調整方法についてメーカーの回答を求めます。外形とリードが一致しても、任意のナットが摩耗したねじ軸へ適合するとは限りません。単体交換の可否が不明なら、不明のまま残し、組合せ一式の交換案やメーカーによる点検案と比べます。
| 候補 | 含まれる範囲 | 発注前に残ること |
|---|---|---|
| 軸端未加工品 | 含まれる範囲ねじ軸とナット。軸端形状は未完成。 | 発注前に残ること追加工図面、加工担当、完成検査を確定。 |
| 軸端加工済みの組合せ品 | 含まれる範囲指定図面の軸端とねじ軸・ナット。 | 発注前に残ること支持軸受・締結部品の有無と機械側評価を確認。 |
| ナット単体の交換案 | 含まれる範囲ナットのみ。既設ねじ軸を使う想定。 | 発注前に残ることメーカーによる組合せ可否、摩耗状態、調整条件の回答が必要。 |
図面と試験条件がそろってから発注する
供給者からは、完成形状の図面、ねじ軸とナットの正式型番、精度・すきままたは予圧の仕様、検査内容、含む部品と除外作業を回答してもらいます。既設と異なる箇所は図面へ示し、設備メーカーまたは機械の設計責任者が採用可否を承認してから発注へ進めます。供給者の「製作可能」と、既設機械への採用承認は別の判断です。
受入れは注文図面と検査記録の照合に加え、据付後に合意した条件での全ストローク動作、反転挙動、温度や異音などを評価する計画にします。合否基準は機械の用途と要求に応じて事前に定めます。HAMへは、図面や元の型番、困っている点をもとに、調達条件の相談と条件に合う日本企業の探索をご相談いただけます。
供給者への問い合わせ例
質問例を開く
[設備名・軸名/元の型番] の交換ボールねじを検討しています。図面 [番号・版] と現状写真を添付します。軸径・リード・ねじ方向は [仕様/不明点]、ストロークと使用条件は [荷重・速度・運転頻度・環境] です。ねじ軸・ナットの正式な組合せ、精度、軸方向すきま又は予圧、軸端加工、ナット取付面と支持軸受への取合いについて、確認可能な仕様と不明点をご回答ください。ナット単体交換のご提案には、既設軸との組合せ可否と状態確認・組付け調整の条件もお知らせください。完成図面、検査内容、付属品、除外作業、納期の前提を含むお見積をお願いします。変更案は設備側の承認後に採用しますので、製作前に相違点を明示してください。
出典と適用範囲
- THK — Ball Screw with Unfinished Shaft Ends
THK公式の軸端未加工品の製品説明を確認。すべてのボールねじの追加工可否や、特定機械への適合を示す資料ではありません。
- THK — Conditions of the Ball Screw
THK公式選定資料の精度、すきま、予圧の説明を確認。JIS・ISO規格本文は未読で、数値表をこの記事の共通受入基準にはしていません。